避妊・去勢手術の目的
避妊・去勢手術の目的は望まない繁殖を防ぐことだけでなく、問題行動や多くの病気の予防に効果があることです。
また、動物自身の健康とQOL(生活の質)を高め、家族の一員として長く幸せに暮らすことも重要なことであり、昨今ではこのような考えなどをふまえ、早期の避妊去勢手術を選択される方が多くなっています。
期待される効果
健康面
性ホルモンに関連する疾患の予防になります。
男の子
精巣腫瘍、犬では前立腺疾患、会陰ヘルニアや肛門周囲腺腫などの病気の発生予防になります。
女の子
子宮・卵巣疾患や乳腺腫瘍などの病気の発生予防となります。
※乳腺腫瘍の予防には手術時期が重要です。(手術時期はご相談ください)
特に猫の乳腺腫瘍はほとんどが悪性腫瘍(乳がん)であり予防がとても大切です。
行動面
発情に関連する問題行動やストレスの軽減になります。
犬におけるマーキング、マウンティング、や発情出血、猫におけるオスのスプレー行動(マーキング)やメスの発情行動は動物や人にとってもかなりのストレスになる場合があります。これらを抑制することで穏やかで人と動物のより良い関係性を築くことが可能となります。
社会面
望まれない不幸な繁殖を減らし、不必要な妊娠の負担をなくします。
デメリットについて
ホルモンバランスの変化により基礎代謝が変化して太りやすくなる子がいます。麻酔のリスクと手術の合併症の発生の可能性が少なからずあります。
手術方法と費用について
すべての手術を全身麻酔下で手術を行っています。当院ではより安全な手術を行うために術前の検査、衛生・麻酔管理、熟練者による執刀、1日の手術件数の制限などを徹底しており、これらはすべての外科手術において共通する重要なことだと考えています。手術中は生体モニター、人工呼吸器により体の状態を常にモニターしながら、可能な限り安全、安心な手術を行うよう心がけています。
避妊手術
犬、猫ともに開腹をして卵巣および子宮を摘出します。手術時間は30分から1時間程度です。避妊手術では1泊の入院が必要となります。
発情期(猫)、生理中(犬)は子宮・卵巣の発達による出血を避けるため発情兆候や出血より1か月以上空けてからの手術となります。
費用
犬 |
40,000円(税抜き)~ |
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猫 |
35,000円(税抜き)~ |
去勢手術
犬では陰嚢の付近を切開して精巣を摘出します。猫では陰嚢を直接切開して精巣を摘出します。手術時間は20分から40分程度です。去勢手術は日帰りの手術となります。
費用
犬 |
32,000円(税抜き)~ |
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猫 |
28,000円(税抜き)~ |
※停留睾丸(潜在精巣、陰睾)の場合の去勢手術について
精巣が陰のうの中でなく、皮下やお腹の中に留まっていることがあります。
特に腹腔内停留睾丸は、正常な睾丸に比べて13.6倍も腫瘍になる可能性が高いと報告されており、去勢手術での予防が推奨されます。
(腹腔内の手術の場合は女の子と同じように開腹するため1泊の手術となります。)
※乳歯遺残について
乳歯遺残があった場合は抜歯処置を行うことが可能です。将来の歯周病予防のために乳歯抜歯をお勧めします。
▲乳歯遺残
※5歳以上の動物の手術について
5歳以上の動物の避妊、去勢手術は術前検査、麻酔、術後管理が異なりますので別途お見積もりが必要です。
手術の流れについて(予約から当日、退院から抜糸まで)
STEP01
まずはご相談ください。
手術のご案内をお見せしながらご説明します。
大切な家族のはじめての手術です。不安なことは遠慮なくご相談ください。
(当院では成長や体格を考慮して犬も猫も生後6か月頃からの手術を推奨しています。)
STEP02
手術を受ける意思が決まりましたら、予約をしてください。
病院で直接予約していただくか、お電話での予約が可能です。予約をしたら、手術予定日までしっかり体調管理を行いましょう。何かあれば病院へご相談ください。
手術のご案内をお渡ししていない場合は予約時に手術にあたっての注意事項をお伝えしますのでメモをお願いします。
エリザベスウェア(術後服)を当院で処方希望の場合は採寸が必要となりますので手術1週間前までにサイズの採寸をしに来院してください。
STEP03
手術前日から当日まで
手術前日:21時以降、食事を与えないようにお願いします。
(水は少量であれば大丈夫ですが、なるべく控えていただくようにお願いします。)
STEP04
手術日
わんちゃん・ねこちゃんのお預かり
手術当日のお預かりは9:00~9:30までとなります。(時間厳守でお願いします。)
※間違えて朝ごはんを与えてしまわないように注意してください。
手術同意書へのサインが終わり、注意事項の説明が終わりましたら、わんちゃん、ねこちゃんをお預かりします。
術前検査
お預かり後に術前検査を行います。(検査で異常があった場合などは連絡があるかもしれませんので、随時ケータイをチェックしておいてください)検査での大きな問題がなければ手術までお部屋で待機します。
手術
いよいよ手術です。手術室で麻酔薬を投与してから気管挿管、生体モニター、人工呼吸器による麻酔管理を行いながら手術を行います。
術後
手術が終了したら、自発呼吸が戻るまで人工呼吸器によるモニターが続きます。
自発呼吸が戻ったら気管チューブを抜管してお部屋に戻ります。
まだ、手術は完了ではありません!このあとも麻酔からしっかり覚醒するまで慎重に呼吸状態を見守ります。
手術後のチェック・手術完了
しっかりと自発呼吸が戻り、意識がはっきりしてきた段階で手術の傷をチェックして出血の確認やバイタルサインをとります。
(この段階で手術完了のご連絡をします。)
・日帰り手術の場合
お迎え時間までお部屋で待機をして待ちます。
・1泊手術の場合
夜になったら少量の水分とごはんで術後の体調を回復していきます。
翌日に再び傷のチェックとバイタルサインの確認を行い、退院となります。
STEP05
退院
お迎えに来られましたら、術前検査の結果や術後管理の説明をします。
入院担当看護師より動物の状態や様子の説明を行い、家族との対面です。
よくがんばったねと褒めてあげてください。慣れない環境と手術で疲れていますのでお家でゆっくり休みましょう。お大事にしてください!
STEP06
抜糸までのお家での管理について
傷口の保護のためにエリザベスカラーもしくは術後服(エリザベスウェア)が必要となります。
術後1週間で傷のチェックを行い2週間で抜糸予定です。
安静にして過ごしてください、心配なことがあればご相談ください!
エリザベスウェア(術後服について)
犬や猫は体に傷ができると舐めて治そうとする習性があります。小さな傷ならまだしも、大きなケガや術後の傷口は、舐めることで雑菌が繁殖したり、治療薬がとれるなど症状が悪化しかねません。そのため「エリザベスカラー」という樹脂製の用具を取り付けますが、大きなカラーが動作や飲食の妨げになったり、首が傷つくなど、体への負担やストレスが指摘されていました。術後服エリザベスウエアは着用することで傷舐め防止と傷口保護をめざす画期的な医療サポートアイテムとされています。
安全性について
獣医療における最も多く行われている手術は避妊・去勢手術であり、手術、麻酔における事故も最も多く発生していると思われます。これには避妊・去勢手術が「簡単な手術である」という認識が飼い主様や獣医師の一部にも存在していることが大きな原因ではないかと考えられています。
避妊・去勢手術にはすべての外科手術の基本となる手技が詰まっており、事故に繋がるような慣れや油断をなくすために1件1件に尽力する必要があります。
また、当院ではより安全な手術を行うために術前の検査、衛生・麻酔管理、熟練者による執刀、1日の手術件数の制限などを徹底しており、これらはすべての外科手術において共通する重要なことだと考えています。