心臓病治療
けい動物クリニックでは犬と猫の心臓病治療に積極的に取り組んでいます。
高齢の小型犬に多い「僧帽弁閉鎖不全症(MR)」と猫の「心筋症(肥大型心筋症など)」においては多数の治療実績があり、たくさんの通院治療中の患者様がおられます。
けい動物クリニックの心臓病治療の特徴
①最新の知見をもとにした診断と治療で、その子の状態に合った治療管理を飼い主様と一緒に考えながら行います。
②当院では開院当初から救急対応を行っており、多くの急性心不全の犬猫の集中治療管理の経験があります。
心臓病は急な変化が起こる病気です。もしものときにも頼れるホームドクターとして最善を尽くします。
③内科治療による長期管理には特に力を入れており、少しでも病気の負担を軽減し生活の質を向上させることを大切にしています。
犬の僧帽弁閉鎖不全症(MR)
犬で最も多い心疾患であり心臓病のおよそ7~8割を占めています。心臓は収縮しながら全身に血液を送るポンプの役割を担っています。僧帽弁閉鎖不全症(MR)とは、左心房と左心室の間にある弁(僧帽弁)が変性して閉鎖不全を起こしてしまい、左心室から全身に送り出されるはずの血液の一部が、左心房に逆流してしまう状態のことです。
進行してしまうと左心房拡大による気管の圧迫で咳をしたり、循環不全による運動不耐(疲れやすい)など様々な症状を引き起こし、最終的に肺水腫を引き起こします。
この病気は早期に発見し適切な段階で内科治療を開始すれば、長期的な予後の改善が認められることが知られています。
■こんな症状に注意してください(早めにご相談、受診してください)
- 咳をすることがある(夜~朝方に多く、のどに何かが引っかかったような咳)
- 以前より疲れやすい、元気がない
- 散歩で歩ける距離が以前より減った。走らない。
- 呼吸が浅く、ハアハアしている
- 気を失ったことがある
- 舌が紫色をしている
- 苦しくて横になって眠れない
- 寝てばかりで、食事や排せつの時だけ起き上がる
顕著な心肥大と
急性心不全による肺水腫
利尿剤、ICU酸素吸入による
集中治療で改善した状態
■僧帽弁閉鎖不全症(MR)の好発犬種
- キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
- シーズー
- チワワ
- トイプードル
- マルチーズ
- ポメラニアン
※これらの犬種以外でも中~高齢の小型犬は注意が必要です。
■病気の診断と治療について
当院では世界基準であるACVIMコンセンサスガイドラインに沿った診断と治療を行っています。
もっともはやく、簡単に心臓病を見つけられる検査方法は「聴診」です。普段の診察時の身体検査で心雑音が見つかり 心臓病の早期発見につながることは多々ありますので、普段から定期的に病院を受診しておくことが大事です。
聴診のほかにはレントゲン検査、心臓エコー検査、心電図検査、血圧測定、血液検査を行うことで、病気の確定診断や重症度の判定が可能です。
治療方法は投薬による内科療法が主体となり、病気の段階(ステージA、B1、B2、C、D)を判定し定期的な検査と投薬治療を継続していきます。心臓の状態に合わせて血管拡張剤、強心剤、利尿剤などを組み合わせて使用することで、心臓の負担を軽減して生活の質を向上させることが目標です。
当院では飼い主様と相談しながら動物の状態に合わせた投薬治療を行うことで、長期的に良好な状態を維持していくことを最も大切に考えています。
※近年、僧帽弁閉鎖不全症は手術により完治を目指すことが可能となってきましたが、外科手術(僧帽弁形成術)を行うことができる病院は非常に限られています。当院でも数例の患者様が専門病院における手術を受けておられますので、ご希望があれば高度な外科手術が可能な専門施設を紹介して連携することが可能です。
猫の肥大型心筋症(HCM)
猫の心筋症で最も多いのが肥大型心筋症です。この肥大型心筋症は左心室の心筋が分厚く肥大してしまい、心室の拡張障害を起こしてしまう病気です。この障害により肺水腫や胸水などが生じて呼吸困難になります。
また、血液循環障害による血栓症を発症すると後遺症や命の危険性にも及んでしまいます。
この病気は予防が難しく、初期症状がほとんどない場合も多いため重篤な症状が出て初めて気づく場合がかなり多くあります。普段の様子をしっかり観察することや定期的に健康診断を受けることで早期に発見することが可能です。
■こんな症状に注意してください(早めにご相談、来院してください)
- 口を開けて呼吸をしている
- 舌の色が紫色もしくは白い(チアノーゼ)
- 苦しそうで横になれない、眠れていない
- お腹で大きく呼吸をしている(呼吸が早い)
- 胸の動きが早く、呼吸数が多い
※特にアメリカンショートヘア、メインクーンなどの種類は好発種であるため注意が必要です。
肥大型心筋症による血栓症で
麻痺した両後肢
肥大型心筋症による肺水腫の状態の猫のレントゲン
猫の心臓病バイオマーカー:
NT-proBNP検査キットでの
陽性反応
肥大型心筋症の猫 ICU酸素吸入、
利尿剤による集中治療により
改善した状態のレントゲン
■病気の診断と治療について
猫の肥大型心筋症は犬の僧帽弁閉鎖不全症とは違い、心雑音が聴取されないことが多いです。そのため、通常の身体検査では異常が分かりづらいため早期発見、早期診断には胸部レントゲンや心臓超音波検査などの精密検査が必要となります。治療は病気の段階によって違いますが犬と同じくACVIMコンセンサスガイドラインをもとにしたステージングを用いて治療方針を決めていきます。しかし、まだ犬のように治療指針が確立されておらず、原因もはっきりと解明されていないため症状を緩和していくための内科療法をしていくことが主体となります。また、肥大型心筋症における最大の危機的状態である血栓症の発生リスクを低減と予防する治療を併用することも重要です。
当院では病気の早期診断から動物の状態に合わせた治療法を飼い主様と相談しながら行っており、長期的に良好な状態を維持していくことを最も大切に考えています。