犬の病気について
当院では全科診療を行なっており様々な症状の診断と治療に対応しています。
わんちゃんは人間のように言葉を話すことはできませんので、体の不調を飼い主様にうまく伝えることができないこともあります。よって、普段からよく観察して健康状態を把握しておき、少しの異変でも気づいてあげることが非常に大切です。
「いつもとなんとなく違う」 「いつもより元気がない」など、いつも一緒にいる飼い主様の感じる異常が一番大事だと考えています。このような漠然とした症状でも、診察の結果、異常が見つかることもたくさんありますし、問題がなければ、ひと安心です。些細なことでも不安があれば遠慮せずにご相談ください。
来院したほうがよいと思われる症状と疑われる病気、代表的な病気について
下痢、嘔吐がある
来院が多い症状のうちのひとつであり、季節の変わり目に症状を訴えて来院するケースが多いです。消化器症状である下痢、嘔吐ですが原因となるのが消化器だけではない場合もあります。放置しておくと重症化してしまい脱水や栄養不良を起こしてしまうこともあり、命の危険性が及ぶこともありますので、早めにご来院ください。
■来院したほうがよい症状と疑われる病気の一例
症状
- 嘔吐・下痢がとまらない
- 嘔吐物・排泄物に出血がある
- 食欲や元気も低下している
- 吐きたいけど何も出ない
疑われる病気
- ウイルス、細菌性腸炎
- 膵炎
- 消化管内異物
- 寄生虫症
- 肝臓、腎臓疾患
- 全身感染症
- 胃拡張・捻転症候群
痛みがある びっこをひいている
体のどこに痛みがあるか分からない場合もあり、症状は軽度から重度まで多岐にわたります。
また、筋骨格系の痛みだけではなく内臓の異常による症状の場合もあります。
■来院したほうがよい症状と疑われる病気の一例
症状
- 突然激しく鳴き叫ぶ
- 姿勢が保てない
- 足をつくことができない
- 腫れている部分がある
疑われる病気の例
- 骨折
- 椎間板ヘルニア
- 膝蓋骨脱臼症候群
- 関節脱臼
- 筋炎
- 腹腔内腫瘍
- 腹腔内出血
- 尿道閉塞
- 皮下膿瘍
- 大腿骨頭虚血壊死
■当院での整形外科疾患と治療の例
骨折
動物の骨折のほとんどが外傷性によるものです。特に小型犬は四肢の骨がとても細く骨折しやすいため普段の生活に注意が必要です。当院では様々な部位の骨折の治療に対応しています。
骨折治療器具
骨折などの整形外科手術では小動物用マイクロエンジンと 動物用インプラントシステムを使用しています。
小動物用
マイクロエンジン
動物用
インプラントシステム
■骨折治療例
7歳/トイプードル/4kg/イスから落下して骨折(右前肢橈尺骨遠位)
デピューシンセスVET チタン製Matrix Mandible 2.0mmロッキングプレート とロッキングスクリューを使用しています。
受傷後
手術後
3ヶ月後
6ヶ月/MIX/2kg/抱っこで落としてしまい骨折(右橈尺骨遠位端)
デピューシンセスVET チタン製LCP1.5mm ロッキングコンディーラープレートとロッキングスクリューを使用しています。
受傷後
手術後
2ヶ月半後
8ヶ月/4kg/ミニチュアダックス/カートから落下して骨折(左脛骨骨幹らせん骨折)
髄内ピンおよびサークラージワイヤーで固定しています。
受傷後
手術後
2ヶ月後
大腿骨頭虚血壊死(レッグ・カルベ・ペルテス症)
この病気は主に小型犬種の若齢期(4〜12ヶ月齢)に発症が多く、大腿骨頭が変形・壊死を起こす病気です。
通常は片側のみに発生しますが、左右の場合もあります。手術までの経過が長くなると筋肉の萎縮が起こり、術後の歩行機能回復までの期間が延びてしまいますので、診断後はなるべく早く手術を検討したほうがよいでしょう。
■大腿骨頭切除手術
当院ではマイクロエンジンを使用したサジタルソーによる切除を行っています。
術後は早期の歩行機能回復のためのリハビリを行いサポートします。
手術前
手術後
手術後リハビリ
咳をしている、呼吸が苦しい
呼吸の異常は命に関わる場合があります。咳の症状が続く、呼吸がいつもより早いなどの症状があれば早めに来院してください。
■来院したほうがよい症状と疑われる病気の一例
症状
- 咳の症状が続いている
- 呼吸がいつもより早く、苦しそう
- 舌の色が悪い(チアノーゼ:紫色など)
疑われる病気の例
- 心臓病(弁膜症)
- 気管虚脱
- 肺腫瘍
- 肺水腫
- 肺炎
- 胸水貯留
- ケンネルコフ
痒みがある、皮膚や耳が赤い
痒みの程度や症状が出る場所は様々であり、場合によっては生活の支障となるようなストレスとなることもあります。
慢性化した皮膚症状は治療にも時間がかかることもありますので早めに来院してください。
■来院したほうがよい症状と疑われる病気の一例
症状
- 皮膚が赤くなっている
- 毛が薄い、毛が抜けている
- 痒みの症状が強い(掻把や咬んでいる)
- 皮膚の色素沈着、皮膚表面がただれている
疑われる病気の例
- 膿皮症
- ニキビダニ症
- 脂漏性皮膚炎
- アレルギー性皮膚炎
(アトピー性、食物性) - ノミ、マダニ性皮膚炎
- 皮膚糸状菌症
- マラセチア性皮膚炎
血尿、もしくは陰部からの出血がある
出血が軽度の場合は気づくのが遅れてしまう場合があります。尿の色調や陰部の腫れなどがないかを日頃からチェックしておくとよいでしょう。
■来院したほうがよい症状と疑われる病気の一例
症状
- 尿に血が混じる、尿が赤い(血尿)
- 何度も尿をしようとする(頻尿)
- 尿をしようとするが出ない
- 生理の出血が続いている、生理の周期が不定
疑われる病気の例
- 膀胱炎
- 尿石症
- 膀胱結石
- 腎臓結石
- 尿管、尿道閉塞
- 膀胱内腫瘍
- 前立腺疾患
- 子宮蓄膿症
尿石症
尿に含まれるさまざまなミネラル成分が結晶化し、腎臓、膀胱、尿道などの泌尿器で結石となり、さまざまな症状を引き起こす病気です。原因は体質や生活環境であり尿のPHの変化により尿石が形成されてしまいます。
尿石形成されると膀胱炎や尿道閉塞を引き起こしてしまうこともあり、手術が必要になる子ともあります。猫と同じく飲水量や食事、生活環境の管理が病気の予防に大事です。
膀胱結石のレントゲン写真
口が臭い、食べるときに痛みがある、歯肉が赤い
高齢の犬猫のほとんどが歯周病にかかっていると言われています。また、若齢でも歯周病になってしまうケースもありますので若いころからのデンタルケアもとても大切です。歯周病は口だけの問題ではありません。歯周病を放置しておくとあごの骨が溶けて骨折したり、全身に感染が波及してしまうことで心臓病、腎臓、肝臓病を引き起こし命に関わる重大な事態を引き起こします。
■来院したほうがよい症状と疑われる病気の一例
症状
- 口から腐敗臭がする
- 歯がグラグラしている、抜けてしまった
- 食事に時間がかかる
- 歯肉がやせて後退し、歯が長く見える
- 顔が腫れている
疑われる病気の例
- 歯周病
- 口腔内腫瘍
- 歯肉炎
- 腎臓病
当院での歯科治療(口腔内処置)について
すべての歯科処置は全身麻酔下で行われます。
■歯科処置の流れ
① 歯石除去(スケーリング):
超音波スケーラーで歯に付着している歯石を除去します。
② 歯の根元を磨く(ルートプレーニング)、歯周ポケットの炎症部分を取り除く(キュレッタージ)
③ 歯の動揺があり抜歯の対象となる歯の抜歯を行い、必要に応じて歯肉を縫合する。
④ 歯の表面をポリッシング(磨く)して終了
重度の歯周病の口腔内
抜歯後の歯
ホームデンタルケアの重要性について
歯周病の予防には飼い主様の協力が欠かせません。治療後のケアなど日頃からのケアがとても大事です。
① 小さいころからケアを行うこと
② 繰り返し行い、はみがきなどのデンタルケアを習慣づけていくこと
③ その子に合ったデンタルケアを見つけること(歯ブラシ、歯磨きジェル、デンタルガムなど)
適切な管理により、歯科疾患の予防が可能です。歯磨きは歯周病予防に最も効果があります。
そのため、小さいころからの繰り返しのケアが必要です。
また、口腔内を日頃からチェックすることで、乳歯遺残、破折、口内炎、口腔内腫瘍などの疾患の早期発見、処置が可能になります。