猫の病気について
当院では全科診療を行なっており様々な症状の診断と治療に対応しています。
ねこちゃんは人間のように言葉を話すことはできませんので、体の不調を飼い主様にうまく伝えることができないこともあります。よく耳にする言葉ですが、「ねこは小さないぬではありません。」 猫特有の性質や健康管理について理解し、よく観察しながら健康状態を把握しておき、少しの異変でも気づいてあげることが大事です。
「いつもとなんとなく違う」 「いつもより元気がない」など、いつも一緒にいる飼い主様の感じる異常が一番大切です。
このような漠然とした症状でも、診察の結果、異常が見つかることもたくさんあります。
問題がなければ、ひと安心ですので、些細なことでも不安があれば遠慮せずにご相談ください。
来院したほうがよいと思われる症状と疑われる病気、代表的な病気について
下痢、嘔吐がある
猫はどちらかというと犬より吐き戻すことが多い動物ですが、急性の頻回嘔吐や下痢、食欲不振、元気がないなどの症状が認められる場合は注意が必要です。
■来院したほうがよい症状と疑われる病気の一例
症状
- 嘔吐・下痢がとまらない
- 嘔吐物・排泄物に出血がある
- 食欲や元気も低下している
- 吐きたいけど何も出ない
疑われる病気の例
- ウイルス、細菌性腸炎
- 膵炎
- 消化管内異物
- 寄生虫症
- 肝臓、腎臓疾患
- 全身感染症
- 消化管腫瘍
など
消化管内異物
犬ほど誤食、誤飲は多くはありませんが遊んでいるうちにひも状の異物を誤飲してしまうこともあり、閉塞を起こしてしまった場合は開腹手術が必要となるので注意が必要です。対症療法に反応しない嘔吐や食欲不振の症状は消化管内異物を疑い腹部エコー検査や消化管造影検査を行います。
閉塞性イレウスを疑うエコー所見
消化管閉塞の手術部位
眼が赤い、眼を痛そうにしている
猫の眼の症状での来院は感染性、外傷性などによる原因が多いですが内科疾患による異常でも眼の変化が起こる場合もありますので注意が必要です。
■来院したほうがよい症状と疑われる病気の一例
症状
- 眼を開けることができない
- 眼が真っ赤になっている
- 眼球が腫大している
- 白眼が黄色く感じる
疑われる病気の例
- 細菌性結膜炎
- ウイルス性結膜炎
- 緑内障
- 肝臓病(黄疸)
- 潰瘍性角膜炎(外傷性)
くしゃみ、鼻水、目やにが出ている
猫には特有の眼や鼻の症状があり、これらは猫ヘルペスウイルス感染(FVR)による猫ウイルス性鼻気管炎という病気の可能性があります。猫ヘルペスウイルスは一般的な3種混合ワクチンでも予防可能なウイルスですが、子猫の免疫が弱い状態で感染してしまうことがあります。この場合、症状が治まってウイルスに対する免疫ができても、ウイルスが神経細胞に潜伏することがあり、再び免疫力が低下したときやストレスを受けたときに症状が発現してしまいます。
症状がない時にはウイルスの潜伏についての判断が難しいので普段から定期的なワクチン接種を受けてウイルスに対する免疫を付けておくことが重要です。
尿が出にくい、血尿が出ている、水をたくさん飲む、尿の量が多い
猫で最も来院が多い症状が泌尿器の症状です。猫は犬に比べ水分摂取量が少なくても生命を維持することが可能であり、体質的に尿の濃縮率を高めて尿量を抑えています。
■来院したほうがよい症状と疑われる病気の一例
症状
- トイレに何度も行くが尿がほとんど出ない
(トイレ以外の場所でもしてしまう) - 排尿の際に出血がある
- 排尿の際に痛みの様な鳴き声をあげる
- 飲水、尿量が増えている
疑われる病気の例
- 膀胱炎(細菌性、特発性)
- 尿路結石(尿石症)
- 尿道閉塞
- 膀胱腫瘍
- 慢性腎臓病
猫の下部尿路疾患(FLUTD)
猫の膀胱から尿道までの下部尿路に起こる様々な症状や病気の総称を「猫の下部尿路疾患(FLUTD)」と言います。
当院に来院する猫の診察では最も多い症状と疾患であり、さまざまな原因や症状があります。
最も多いのが「特発性膀胱炎」で検査上明らかな原因が見つからないのに関わらず、膀胱炎症状(血尿、頻尿)を呈してしまいます。次に多いのが「尿路結石(尿石症)」です。尿石症では腎臓から尿管、膀胱、尿道の中に結晶や結石(シュウ酸カルシウム、ストルバイト)ができる病気です。結石が尿管、尿道に閉塞した場合は急性腎不全(尿毒症)を起こしてしまい重篤な症状から命の危険に関わることもありますので迅速な対処が必要です。治療としてはどちらも原因をつきとめてそれを改善することですが、日頃からの病気を予防するためのケアが大切です。
■当院ではFLUTDの予防に以下の3つを飼い主様に実践していただくことをお勧めしています。
① じゅうぶんに水をのませる
② バランスの取れた食事管理
③ 清潔なトイレ環境
※これらでも改善しない場合や再発を繰り返す子には治療食による食事療法を行っています。
猫の慢性腎臓病(CKD)
腎臓の機能が長い年月をかけて、徐々に低下することで起こる病気です。犬にも起こる病気ですが特に高齢の猫で多く、長生きしている猫では避けて通れない疾患と言えます。(15歳以上の猫の80%以上が慢性腎臓病だという報告もあります) CKDの病気の段階はIRIS分類というものを用いて1~4のステージを判断します。
当院ではIRIS分類で重要な血液クレアチニン値だけでなく、院内で腎機能マーカー(SDMA)の測定が可能なため、これらを併用してIRISステージ分類の判断や健康診断、術前術後検査を行っています。
■こんな症状があればご相談ください
① 食欲にムラがあり、やせてきた
② お水をたくさん飲むようになった
③ 尿の色が薄く、量が多い
猫のCKDはいつの間にか進行していることが多く、病気の早期発見と治療を行うことで高齢期の生活がとても安定したものになるでしょう。
よって、腎機能評価も含めた定期的な健康診断をお勧めしています。
口の中が赤い、口を痛がる、口臭がきつい
猫の口の中をよく観察してみたことはありますでしょうか。かなりの頻度で猫の歯肉は赤くなっています。
症状が出るころには病気が進行していることも多く、日頃からのケアとチェックが大切です。お口のにおいや食べ方、歯肉の状態など気になることがあればお早めにご来院ください。
口腔内環境を整えることは全身の健康状態を保つために重要です。
■来院したほうがよい症状と疑われる病気の一例
症状
- 歯肉が赤くなっている
- 口臭がきつい
- よだれが出ている
- ごはんを食べにくそうにしている
疑われる病気の例
- 猫の歯肉口内炎
- 慢性腎臓病
- 口腔内腫瘍
- 歯周病
- 猫の破歯細胞性吸収病巣
- ウイルス感染症
猫の歯肉口内炎
犬の様な歯石の付着、歯周病よりも猫は歯肉や口腔内粘膜の炎症が問題となることが多いです。若い猫でも歯肉が赤くなっている子がおり、ほとんどが無症状ですが、進行すると口臭きつくなったり、口内炎が広範囲になりよだれが出て、痛みで食欲が低下することもあります。また、このような状態では腎不全の発症を早めてしまう可能性もあります。
治療としてはまず原因となる疾患を治療することで口腔内環境を改善していきます。内科治療では抗生剤、抗炎症剤やインターフェロン製剤、サプリメント(プレバイオティクス)などを使用します。難治性の歯肉口内炎には外科的治療が適応となり、抜歯手術(全顎抜歯、全臼歯抜歯)を行います。抜歯手術の治癒率は60~85%であり外科治療を行っても、その後に何らかのケアや治療が必要になるケースがあります。
当院では内科治療ではインターフェロン製剤による口腔内ケアを積極的に勧めており治療効果が認められる子も多数います。また、全臼歯や全顎抜歯手術にも対応していますのでご相談ください。